2011年9月6日火曜日

ダイナミック・マーケティングを考える~動的なプロセスとカスタマー・エクスペリエンス~


ソーシャルメディアがマーケティングの潮流として注目されている中、なかなか大企業の方向性は決まらず、中小や大企業でも事業(ブランド)別に予算を持っている企業から導入が進んでいる様に思えます。


そんな潮流の中、施策の一環として捉えられがちですが、『戦術ではなく、しっかりと戦略として考えなきゃいけないですよねー。』というお話を。


■パーソナライズされたコミュニケーション領域


ソーシャルメディア領域では非常に柔軟な対応が必要であり、それは動的であるとも言えます。カスタマーセンターなどを運営している企業や提供している企業の方、もしくは店舗運営をしており直接お客様と接している方でしたら、特にその事がお分かりになると思いますが、カスタマーセンターなどの1対1のコミュニケーション領域においては、柔軟かつ迅速な対応であればあるほど、その対応をされた顧客の満足度は高くなります。
その為、どういった問合せが『来ているのか(現状)』『来るのか(予測)』『潜在化しているのか(傾聴)』と言った視点で考え、対応策を考える事が迅速な対応につながり、予習と復習からの現状理解によって、柔軟な対応にも繋がります。

そして、上記の問合せにおいて『これから来る問合せ(予測)』は担当者の市場理解と商品理解が必要であり、『潜在化した不満(傾聴)』については前出の予測にからキーワードを複数抽出し、市場を傾聴する事と、顧客のアカウントが特定できるのであれば、その声を聴き続けることが大事であると考えます。

パーソナライズされたコミュニケーション領域においては特に動的なプロセスの必要性が多分にあり、そういった点から、小回りの利く企業である中小や事業予算で動ける企業ほどソーシャルメディアの対応は早いのだと思います。


この様に、マーケティング戦略で非常に大きな転換期が訪れている現状においては、これまでのマーケティングの考え方自体も再点検が必要なのでは感じます。


そこで、今回は掲題でもある『動的プロセス』と『顧客経験価値』について考えたいと思います。



■動的プロセス ~ダイナミック・プロセス~


ここで少し考えたいのが、ソーシャルメディアによって、パーソナライゼーションは早い速度で進んでいる様に思えるのですが、本当にそうでしょうか?


一つのパーソナライゼーションされたマーケティング施策の一つとして、ソーシャルメディア施策があるのですが、それを実施する事でパーソナライゼーションなのでしょうか?
WEBというバーチャル空間でなされたブランド体験は、リアルな体験と比べると受容的であり、且つ、表層的であり、深い態度変容に結びつくようなブランドインパクトを与える事は基本的には無いと考えます。
重要なのは、いかにリアルと結びつけて
・リアルからWEBへ濾し出す
・WEBからリアルに濾し出す
これらの作用を生み出すことが出来るかが重要であり、その為の自社におけるマーケティングパーツ(自社でコントロール可能なマーケティング領域)其々の役割を今一度再考する必要があります。
マーケティングの4Pにおいても勿論同様であり、
1. 製品(Product)
⇒ 固定かつ大量生産の観点ではなく、個人にパーソナライズされた価値創造の方法論が必要(リードの取得と活用が重要)


2. 価格(Price)
⇒ 個人に対し相対的且つ総合的な観点からのパフォーマンス提供が必要


3. 流通(Place)
⇒ 物理的な流通や位置の他に、心理的な流通や位置を如何にして築くかが大事(ソーシャルメディアの活用も重要)


4. プロモーション(Promotion)
⇒従来のプッシュ型ではなく、如何に顧客を引き込み、巻き込む事のできる企画が実施できるか


という様にプロセスを『動的』に捉えた考え方への転換が必要になると思います。





■顧客経験価値 ~カスタマー・エクスペリエンス~


生活者は様々なメディアがある中で、WEBを通じて多くの経験を得ています。
より多くの経験を提供する為、操作性(ユーザビリティ)、読みやすさ(リーダビリティ)、見つけやすさ(ファインダビリティ)の改善がより多くの経験向上へとつながります。


生活者はこの経験を通じて次のアクションへと繋がるのですが、この時に提供されている経験価値には5つあると言われています。



≪5つの経験価値≫
1. 知覚的経験価値(Sense)
⇒ 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触感といった五感を通した顧客の感覚に訴える経験価値。
飲食店だと『香り』や『店舗デザイン』がこれにあたる。

2. 感覚的経験価値(Feel)
⇒ 感情に対して訴えかける経験価値。
どのような心理状態での来訪になるのかを仮説設計しなければならない。

3. 創造的経験価値(Think)
⇒ 知性や好奇心に対して訴えかける経験価値。
企業やブランドの理念や歴史などがこれにあたる。

4. 行動的経験価値(Act)
⇒ 行動、身体、ライフスタイルなどに訴えかける経験価値。
ライフスタイル提案などがこれにあたる。

5. 準拠集団(Relate)
⇒ 集団、グループへの帰属意識に訴える。
ブランド品を所有する事の優越感など。



上記の事を動的プロセスも含め、どの様に提供できるのかを考えなければならない為、大企業になればなるほど、非常に大きなの労力や判断力が必要とされます。



企業のオープン化を考える上で、リードの取得と活用方法も非常に重要な位置づけにあり、短期的な戦術として捉えるのではなく、戦略として実行する事が望ましく、これらの検討なくしてオープン化は難しいと思うのです。



それこそ、トップダウンで判断して貰えるのが一番手っ取り早くて現実的、というのが現状でしょうね。