2013年2月11日月曜日

より良い顧客体験へ向けた『チャネル・シームレス』への取り組み~動的プロセスの視点~


2011年末頃から現在(2013年2月)にかけて、顧客とのコミュニケーションを最適化するための「シナリオの考え方」や「コンテンツの在り方」をコンサルする仕事や案件相談が増えてきています。


これはマーケティング界隈で、昨今の話題の中心となっている「ビッグデータ」や「コンテンツ・マーケティング」などが一因にあるほか、顧客や見込み客と接する現場においても「相談されるケースが減った」「見込み客開拓がなかなか進まない・なかなか見込み客になってくれない」「気づいたら他社にリプレイスされていた」など、事業を営む企業のBtoC・BtoBを問わずにこのような事が起きている事が大きな要因のように思います。


そういった背景から、前述の「シナリオ」や「コンテンツ」に関するコンサル依頼や案件相談が増えているのだと思います。(案件相談にしても、現場が上を説得するためにどういった数字を用意すれば良いのか等、具体的に動きだしをしたい思いが伝わる内容が多いです。)


そして、企業のマーケティングの考え方自体も、自覚はしていないケースもあるものの“静的なマーケティング”から“動的なマーケティング”へと変わってきているように感じます。


そのような中、昨年参加したイベントでは「チャネル・シームレス」という言葉も使われていました。




■ これまでのチャネルの「接点管理」

「チャネル・シームレス」について解説する前に、企業のこれまでの「接点管理」の在り方について。

たとえば、実店舗があり、オンラインでもECを運営しているある企業の場合は、以下のような『接点』と、その接点の内容を管理する『データベース』が存在しています。

[図1]


上記の図1にように、顧客との接点にはオフラインとオンラインがあります。この其々のラインにおける接点データは、オンラインとオフラインで別に管理されており、同一の項目でもデータの持ち方が異なるケースも多く存在します。

たとえば、年齢の場合、オンラインでは会員登録などで獲得した個人情報に生年月日が詳細に記されているのに対し、店頭では年齢を店員の目検で年代を把握する、という粒度が大きく異なるデータ取得精度になっているケースなどが挙げられます。




■ オフラインとオンラインデータの統合化

しかし、オフラインとオンラインで異なる管理をしていたデータベースを統合化する動きが昨今活発になりつつあります。その要因となっている『大きなメリット』として、会員詳細データの把握と時系列背店データ管理による『5W2H』の把握があります。

【5W2H】Who、When、Where、What、How、Why、How much
(いつ、どこで、誰が、何を、どうする、なぜ?、いくらで)

この5W2Hの把握によって、今とるべき・近い将来とるべき振る舞い(コミュニケーション)がわかり、下図にあるようにオンラインとオフラインで統一化されたデータを接点となるチャネルで活用することで、継続的な関係性構築につなげることが可能になります。


[図2]






■ 「チャネルシームレス化」思考で見えてきたシナリオとコンテンツの重要性

図2のように時系列で管理されたデータは様々な接点(チャネル)と同期され、接点(チャネル)の最適化にも寄与します。それがいわゆる『チャネル・シームレス』です。この『チャネル・シームレス』を実施できることによって、顧客の『動的なプロセス』へのおもてなし的対応が可能になります。


[図3]



しかし、この画を実行するためには多くのことを整理しなければなりません。

【現状整理】
<ターゲットについて>
・ターゲットは誰か
・ターゲットを取り巻くチャネル環境
・購買プロセス
・購買プロセス上のステータス区分
<自社について>
・既存チャネルの把握/整理
・既存コンテンツの把握/整理
・ステータス区分毎の不足コンテンツの割り出し

上記の内容が把握/整理されることによって、『コンテンツ』と『シナリオ』の重要性に初めて気づくというケースが多くの企業で一般的だと思います。

そして、これらの把握/整理を行うことで、次STEP以降の『コンテンツとシナリオの作成』『シナリオの実行』『シナリオの検証』へ向けた地固めがされます。多くの依頼や相談案件がこの地固めステータスです。



まだまだコンテンツとシナリオへの取り組みは多くの企業で始まったばかりと言えます。




■ あとがき

ここ数年間は『データドリブン思考』でのマーケティング施策の最適化(ある種極地最適化)が潮流にありました。それに対し、最近はマルチエントランスな考え方で、様々なニーズとニーズの強弱に応じて最適なタイミングで最適な提案ができるようにするために、『シナリオ』や『コンテンツ』に関する相談が増えているのは冒頭に話した通りです。それは『顧客情報』と『コンテンツ』と『接遇シーン』を想定した『シナリオ』を複数パターンに応じて用意していく『引き出しの多いアドリブ思考』とも言えるかもしれません。

これからは『データドリブン思考』と『(引き出しの多い)アドリブ思考』を併用したマーケティングの取り組みが増えていくのが必然の流れのように思えます。これらを私は『静的なマーケティング思考』と『動的なマーケティング思考』と呼んでいます。

しかし、企業の取り組みも一筋縄ではいかないようです。

顧客事例一つだけでも立派なコンテンツなので、「多くの企業で取り組んでいただきたい」というのが本音ですが、「部署の壁」や「決裁ルート」の関係で進まないケースが多いように感じます。チャネル・シームレス化(顧客との継続的関係構築)に向けて動きだすためには、企業の体制こそがシームレスにならないといけないようにも思います。

また、このような取り組みに対してトップダウンで進めていける経営者とそうでない経営者の企業では、同業でライバル関係にあっても、5年で大きく差が開くのではないでしょうか。

現場は「はやく取り組みたい!」と思っていてもなかなか進まない。それが現状のようです。