昨今、地域活性化というお題目の中で地域SNSへの注目度が高まっています。
一言で地域SNSと言ってもその用途は様々で、地域の情報を地域外に対して発信する事を主とするケースや、地域のナレッジを蓄積し、地域生活の利便性向上を主とするもの、その他にも地域の声を行政に取り込みやすくするためのもの、等がざっとあげられると思います。その中で地域SNSを活用した地域活性化で言われている主な意味合いは「地域の情報を地域外に対して発信する事を主とするケース」が多く、そこに記事タイトルにもある「地域SNSは本当に「=地域活性化」なのだろうか。」という疑問があります。
数年前、ある観光地の地域活性化プロジェクトの中で地域SNSの検討アドバイザリチームに参加したことがあります。
そこでの検討内容は『地域の観光情報を発信する』事が軸足になっているものだった。残念ながら検討結果がどうなったのかは、最後まで見届けていないため分からないが、その検討中に出てきた大きな疑問が「地域情報をそもそも発信する必要があるのか。」というものでした。
もう少し掘り下げて書くと、「観光の事前情報収集による期待値と、実際に観光してみて感じる良さの観点は同一性では無いのではないか?」という内容です。
「現地に行ったときに初めて感じる事ができる良さ。」
この良さ「に如何にアクセスすることが容易に出来るか」が地域の良さをより多く知ってもらうポイントだと考えられますが、その「現地で体感する地域の良さ」はどういった事前期待値があったかが大きな影響要因になります。
観光地に来る人の事前期待値は情報誌、TV、旅行系サイト、クチコミ、SNSなどで形成されるのが現状であり、その多くの情報がグルメ、景色、イベント、施設、といった伝わりやすい情報が要素としてあります。それに対し、「より地域の良さを知ってもらうために地域SNSで深堀した情報も発信しよう」というのは正直押し付けがましくも思います。というのも、事前に現地の『細かい情報にアクセスできるリテラシー』は相当高いものだと思いますし、その情報量を咀嚼できるリテラシーも相当ハードルが高いものだと思うからなのです。
参加した議論の他にも、その他地域においても事前期待値を持ってもらうことが地域SNS活用の争点となるケースが多いと思います。たしかに事前期待値を持ってもらうためのアテンションも重要なのですが、実際に行った際のギャップがマイナス方向であれば、それこそが客足を「止まらせる要因」になってしまうと思うのです。地域SNSで活性化を考える以前に、観光地としてのスペックが整理されていて、しっかりとしたコンテンツが存在することが「地域の情報を発信していく事のメリット」になるので、検討のうえで最も重要なことではないでしょうか。
そのうえで「地域活性化」の手段として「地域SNS」が用いられる議論があるなら良いのですが、そうじゃない観光地にとって地域SNSを導入する理由は地域活性化の手前の地域力の蓄積というナレッジ型での運用にあると思います。
まずは現地に降り立った人に、事前期待を裏切らないコンテンツと、事前期待とは違う良さを体験できる「気づき」を与えることであり、事前に「玄人が喜びそうな現地のマニアックな情報」を提供することではないと思います。そのうえで地域のウェブ活用という点で考えた場合に、より体験が共有化されやすいコンテンツがあるか、共有化しやすい仕組みが作れるか、情報にアクセスしやすいか、という点が枝葉として存在するのだと思います。
地域SNSも手段の一つであり、それが根本的な解決ではないと思うのです。
参加したプロジェクトでは、そういった議論の経緯があり、地域SNSの検討は中長期事項になっていき、その後は存じ上げない、という状況なのです。
まずは現状の整理と定義が大事です。
もし、地域SNS(地域コミュニティ)や地域のWEB活用が現状課題として存在している方がこの記事を偶然にも目にしているのであれば、観光客から観た地域とは何か、コンテンツとは何か、コンテンツは何があるのか、常連と非常連の違い(マインドステップ)は何か、接点となるチャネルは何があるか、文化・風習の違いは何か、といった点を整理し、何が優先課題なのかを考える点からはじめてみてはいかがでしょうか。
※トップの画像と参加したプロジェクトは関係ありません。(笑)