2013年4月2日火曜日
パーソナライズした広告時代と言うけれど、だからこそ、マス広告的な考えが重宝されるのかも。
あなたは20才までに、どのようなメディアに囲まれて育ったのでしょうか。
この20才頃までのメディア接触傾向によって、その人が持つメディアへの愛着度は変わってきます。メディアエンゲージメントとはちょっと違いますが、それの大枠的な捉え方にしたようなものです。
そして、メディアと広告と消費者の話をする時には、大抵は30代以降の消費ぼボリュームゾーンを想定してメディア論、広告論も組み立てられるわけなのですが、そうすると大抵がテレビ世代だし新聞購読層だし雑誌やラジオも好きなんですよね。
何が言いたいかと言うと、この消費ボリュームゾーンの世代たちは、「マスメディアにエンゲージメントしている層ということになる」と、言いたいわけなんです。
■学生時代のメディア接触は小さなクラスターの潤滑油
私が学生だった頃は、「ラブジェネ観た?」とか「Mステ観た?」とか「鈴木蘭々のCMいいよね!」とか、そんな話題がクラスや部活での対人関係を築いたり運営していくための潤滑油だったように思います。
では、今の学生はどうなのか。
趣味は確かに細分化されてきていて、共有できるものが当時に比べてなくなっていると思うのですが、それでも利用しているSNSやLINEなどは学校という小さなコミュニティの中の更に小さなクラスターの運営のための活用が主であり、その他の「ネットリテラシーが高いか?」という部分に対しては、ほぼNOです。
では、この活用されるSNSやLINEでは、どのような使われ方をしているのか、というと、メディアの中ではテレビなどのマスメディアの話題が多い状況です。結局は潤滑油としてマスメディアが存在しています。
■共通項を作ることが関係性構築の王道
新社会人、異動先、転職先、新入学、入部。これらは人間関係を新たに構築しなければならない、スタート地点の一例です。このスタート地点から人間関係を構築していく方法論として、学生時代も今も変わらずにあるのが、「共通項を作ること」が重要になります。
この「共通項をつくること」は、確率論で考えればマスメディアなどは、チャネルが限られていて、接触が容易で、無料もしくは安価で、タイムリーな体験性もあり、共通の話題とするにはとても良い材料です。
こういった、外さない「話題」や「切り口」を持つことで、コミュニケーションが円滑になります。ようは、相手にパーミッションを貰うための材料として存在しているのが、マスメディアであり、それを使う先が「学校」「部活」「バイト先」「会社」「喫煙所」そして「SNS」「LINE」などのオンラインツールです。
人は自身が「どのクラスターに所属しているのか」という事を、とても自然、そして常に意識している生き物であり、情報はその環境を生き抜くための武器だと思うのです。
■嫌われる広告、嫌われない広告
この小見出しで大方の想像がつくと思うのですが、嫌われる広告とは、いつまでも付きまとってくるWEBの広告です。
広告関係の人以外に専門用語を入れても伝わらないので、広告の種類を「看板型WEB広告」と「アプローチ型WEB広告」の二種類に分けて書きます。
[看板型広告]
これはある程度の不特定多数に閲覧させる広告です。
粒度としては、「あるポータルサイトに訪れた人」から「あるポータルの特定のカテゴリに興味がある人」というような感じがおおよそのイメージです。
[アプローチ型広告]
これは、あなたの事が気になる、あなたの事が好きな広告で、あなたと何かと接触を持とうと試みてきます。
あまり好きじゃないブランドがずっと付きまとって来れば、そのブランドは「あまり好きじゃない」から「反吐が出るほと嫌いなブランド」になることもあり得ます。
とても好きなブランドは交際相手のようなもので、それなりに好感は持ってもらえますが、あまりにもしつこいと「ちょっと嫌な一面も見ちゃったな」という風に交際相手に夢中だった人を少々冷めさせることもあり得ます。
■「狩場」や「焼畑」発想の広告は大した成果を上げない
問題は、この『アプローチ型広告』が注目されている理由が、どうも「狩場」としての発想に思える点です。
例えばFacebookでは『国、年齢、性別』は当たり前として、その人が『独身なのか?』『何市に住んでいるのか?』『勤務先は?』『学歴は?』などの項目にプラスアルファで、広告を出している企業のFacebookページに「いいね!」している「“あなたの友人の”推薦」が広告になって、まさに不特定多数ではない、「あなた目がけてアプローチしてきている広告」が配信されることです。
他にも、ダイエットサプリのサイトを見た数分後には、そのサイトのダイエットサプリの広告が延々とあなたを追いかけます。あなたのマインドとしては他社製品と「比較検討」している段階で情報収集としては、サイト接触で十分な情報が得られたのにもかかわらず、そのダイエットサプリは「もっと私を見て!!もっと!!」と言わんばかりに追いかけてきます。
これを「狩場」として考えれば、企業からすれば「効率がよい」ように見えるかもしれませんが、ターゲットの『マインドプロセス(検討段階?情報収集段階?)』『接触区分(顧客?新規?)』『商品リードタイム(接触から購入までに至るプロセスにかかる期間)』などから『タイミング』よく、その瞬間に相応しい『クリエイティブ』と誘導先『コンテンツ』へと導いていかなければ、嫌な印象を抱かれて終わるだけではないでしょうか?
「狩場」的な発想の人は別な言い方で「焼畑」ともいえます。この「焼畑」を持ち出す方の多くが「確率論」の話をするのですが、プロセスやステータスの定義などをしっかりと整理し、正しいシナリオでコンテンツへ導いていけば、パーチェスファネル(漏斗)の出口付近(購買プロセス終盤)を母数とした確率論ではなく、入口の認知や情報収集段階などの段階において、其々の段階から次の段階へとつながる確率は高くなり、結果として出口付近の母数も多くなり確率もあがると考えられるので、「焼畑」は一般論としては良い事ではありません。
中長期的に考えれば、「狩場」「焼畑」的な広告は大した成果をあげません。
■パーソナライズされた広告時代にこそ、マス広告が有効なのでは?
先に述べたように、関係性構築には「パーミッション」が必要です。パーミッションもなく限りなく個人にセグメントした形の広告は、名簿を買ってきてテレマしているのとたいして変わりません。
ではどうすればいいのか。まずは、事前にイメージを作り上げることが必要です。敷居を下げ、入ってきてもらいやすい環境を事前に作って行く事が大事です。
・どのチャネル、どのキャンペーン、どのコンテンツが、
・どのような層の、どのようなマインドに、どのように接触し、どのような関係性を構築しているのか、
といったことが重要なのです。
要するに、マス広告で不特定多数に広告を投下する時のような感覚で、広く、嫌われないように、ちょっとだけ好きになってもらえる、そんな入口からシナリオを考える必要があるのではないでしょうか?
特に消費ボリュームゾーンの人は、マス広告への好感度は得やすい環境だと考えられます。(どっかにデータ無いかな?あとで探そう。)
Facebookのようなアクティブに人が集まる空間を持つSNSを「町の名簿屋さん」にしてしまうような事になる前に、SNSまで「焼畑」になってしまう前に、CRMも視野に入れた取り組みが拡大し、CLVが意識される環境になることを強く望みます。
■あとがき
そういえば、一時、TVCMもターゲティングをしていく傾向にありましたけど、そのままの流れでこれからも行くのでしょうか?
個人的にはWEBのマネをマス広告がやる必要はないと思います。
もちろん、何かしらのキャンペーンでクロスメディアプロモーションを期間的に仕掛けていくのであれば、ターゲティングの必要性も高いので、そういった面では仕方ないと思います。
しかし、あとの展開もないのに、やたらと検索させる事をゴールとしたクリエイティブも一時期異常に多かったので、なんだか悲しい気持ちにさせられました。
「ストーリーは語っても、シナリオを作れない。」
そんな代理店が業界を斜陽にするのだと思います。