2013年5月4日土曜日

【Tips】メールマーケティングのやり方・考え方~“個”を意識したマーケティング時代だからこそ、メールマーケティングを見直そう。~


メールはターゲットへメッセージを伝える大事なツールです。


昨今、デジタル領域でも注目される“個”に対してのコミュニケーション。「おもてなし」とまで表現されることもあるこの考え方ですが、概念的にはソーシャルメディアの普及によって浸透したと言えそうですが、“個”を特定して関係性を醸成するという点では古から手紙、電話、口コミなどが存在していましたが、デジタル領域においてもメールが“個”を特定した形でのコミュニケーションとして1990年代から存在しています。

マーケティング手法について、「新しい手法」か「古い手法」かで良し悪しが評価される風潮もあるようですが、現在、メールはネットとリアルをつなぐ共通キーとして再注目されています。

今回はそのメールを活用したメールマーケティングについて、考え方から実行フェーズまでを簡単にまとめたので紹介します。





■『考え方』 - コミュニケーション手段(Push)としてのメール

メールの特徴として、以下のようなことが言えます。

≪メールの特徴≫

1. プッシュ型のチャネル
2. 個別アプローチが可能
3. タイミングを意識した施策が可能 ※特にモバイルデバイス
4. 優れたクリエイティブの配信(HTML)も可能
5. 安価に実施が可能
6. 接触頻度をコントロール可能
7. 表現のコントロールが可能
8. 誰がどのような行動をとったのか計測可能



[参考] 表1:個に対するコミュニケーション特性表 ※1













Push手段としてのメディア活用で比較した場合でも、自社メールが“個”へのアプローチで手段としては優れていることが分かると思います。

特にCRMツールと連携したマーケティングにおいて、メールアドレスがドメインを跨いだサービスを横断した行動や、オンラインとオフラインの異なった領域で行動を時系列に一つの行動文脈として把握/整理する役割として注目されているのが昨今のマーケティング潮流になっています。

このメールアドレスを共通キーとした考え方の上で、メールマーケティングの考え方も変化してきています。

 全体に対してどう読ませるのかと言ったメルマガの「ライティング」に比重を置いた考え方から、メールからいかに行動へと繋げるのかという「メールマーケティング」の時代への流れを経て、現在は統合的なメールマーケティングのSTEPになりつつあります。

以下には、“まずは”メールマーケティングを生きた施策にするためのエッセンスを簡単に紹介します。




■メールマーケティングの役割


≪役割≫
・ブランディング
 親近感、理解促進、情報提供

≪販売促進≫ ←どちらかと言うと、こっちがメールマーケティングと言われている。
・ターゲットの最適化(商品における)
・タイミングの最適化
・コンテンツの最適化





■全体設計


≪各プロセス≫
1.顧客の獲得
 ・どのように新規獲得するべきか。
 ・どのように獲得するのがよいか。

2.顧客の維持
 ・どの顧客に注力するべきか。
 ・どのように維持をするのか。

3.追加販売(アップセル・クロスセル・クロスユース)
 ・どうのように追加販売を促すか。
 ・どの程度の追加販売を見込むのか。






■配信対象(ターゲット)の考え方

≪基本情報を活用する≫
顧客の属性情報(性別、年齢、職業など)を基にした配信。
※ニーズに対してのターゲティング精度は属性情報だけでは不十分なので留意を。

≪RFM分析を活用する≫
R(Recency:最新購買日) いつ買ったか、最近購入しているか
F(Frequency:累計購買回数) どのくらいの頻度で買っているか
M(Monetary:累計購買金額) いくら使っているか
※ニーズの内容まではRFM分析では分からない。
※分析には十分なノウハウが必要。
※ニーズの仮説を導くためには属性情報も含めた相関分析が必要。(相関関係は導けても因果関係ではない)

≪ログ情報を活用する≫
カートで離脱した、どの商品を買ったなどの具体的な行動を基に、精度の高いニーズ把握が可能。
※但し、十分なログを残しているアクティブユーザーに限られてしまう(示唆が得られるスコアに達しないため)




■件名と本文の考え方

≪導線の考え方≫
・件名と本文と目的サイトの整合性
 特にターゲティングメールやメルマガの場合に必要な整合性
 ※トランザクションメールの場合、ログからの整合性が重要

≪関連性の考え方≫
受信者との関連性、ジブンゴト化をどのように高めるのか。

≪幅について≫
・PC
 テキスト)全角30~35文字程度
 HTML)600~700ピクセル程度




■タイミングの考え方

≪送信するタイミング≫
・購入履歴から判断する方法(ステップメール的な発想)
 過去にターゲットが購入した時間帯や曜日履歴から、ターゲットに開封してもらいやすいタイミングでの送付が可能。
 ※曜日や時間帯などのデータを格納している必要がある。
・トランザクションメール
 行動に対して即座に配信したほうが効果は大きい。(直後のほうが開封率がそもそも高い)




■分析と検証 (A/Bテスト)

≪各指標と改善点≫
[指標]              [改善点]
到達率                 エラーリストのメンテナンス、認証技術の導入
開封率                 件名の改善/全体の見直し
クリック率      訴求内容・位置の見直し
コンバージョン率    訴求する情報量の見直し
退会率        最適な頻度の検討/退会の質の検証


≪A/Bテスト≫
・一度のテストで変更する箇所(変数)は一か所にする
 複数の変数(対象箇所および項目)に対し修正箇所も複数あると検証(要因の特定)が困難になる。
 件名のテストの場合、本文を同一にして件名を変える。そして配信日時も同一にし、配信対象も偏りの無いようにする。
 ※対象やサービス内容によってはユーザーエージェントにも気を配る必要はある。
 ※地域性が出るようなサービスやメールの文面がある場合、特に地域の偏りにも注意したい。

≪開封率の下がる要因例(参考)≫
・本文との関連性の低さや魅力の無さが慣習化してしまっている。
・定期ニュースの筈なのに、定期的ではない。その上配信頻度が高い。
・件名が業務的(管理番号、件名に本文の魅力が語られていない)



■配慮すべきこと

メールマーケティングを実施する上で、コミュニケーション上の対象への配慮は当然のことながら、特電法の遵守も基本中の基本です。

≪特電法の要点≫2011年改正版 ※2
・オプトイン取得義務
 特定電子メールを送信するためには、事前に同意を得ていなければならない。
・保存義務
 オプトイン記録は一定期間保持する。(期間はオプトアウトされるまでの間、最後に送信した日から1か月間のいずれか遅い方)
 ※通信販売の場合は特商法の三年間の保持義務あり(最新の特商法を要確認)
・表示義務
 必要事項をメール中に記載する。(オプトアウトできる旨の記録、信責任者の住所、苦情や問合せを受け付けるための電話番号もしくは電子メールアドレス、またはURL(受付フォームが良い)でも可)
・(参考)ダブルオプトインが良い。(望ましい)
 なりすまし防止のためにシングルオプトインではなくダブルオプトインがよい。(フォーム入力/空メール→確認メール→登録完了)※義務は生じていない


※特電法 ・・・ 正式名称は「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」




■メールマーケティングを始める時の手段検討

≪配信ツールの選定ポイント≫
・サービスコンセプトの確認
 新規会員収集向けなのか
 既存顧客データへの配信向けなのか
 外部データ(システム)との連携における柔軟性(拡張性なども含む)
・性能面評価
 到達率はどの程度なのか
 到達率を向上させるための工夫は何か

≪外部システム連携≫
・ログを含めたメール配信が可能か?(RFM分析を含めた配信が可能か?)
・文面へのレコメンド配信が可能か?(基本属性、購買情報、行動情報を基にしたレコメンド配信)




■留意点や注意書きについて

統合型マーケティングを今後意識していくケースは多くなると思います。その中でメールマーケティングに必要な考え方として以下のような内容が考えられます。

≪コミュニケーションの考え方≫

1. どのようなユーザーに対して(対象の最適化、コアアイデア)
2. どのチャネルを通して(チャネルの最適化)
3. どのようなタイミングで(タイミングの最適化、シナリオアイデア)
4. どのようなコンテンツを送ることが(関係性の立証)
5. より効果的なのか(分析、改善)


その他にも生活者とのコミュニケーションにおいて、メールがどのような文脈になるのか。クロスチャネル、オムニチャネルというような視点で考える必要性はあります。

『なぜメールマーケティングを実施するのか。』

この意味づけをしっかりとした形で実施できることが望ましいのは言うまでもありませんが、なかなか「目の前の数字稼ぎ」という観点から運用されてしまうケースもまだまだ多いのが現状です。しかし、そういったコミュニケーションも営業や組織の在り方も変化していくにつれ、『なくなっていく考え方』のように思います。



※1 ソーシャルメディアの活用はPushに限ったことではありません。
※1 メールに関してもどう扱うのかで顧客にとっても優れたチャネルになりますし、スパムなチャネルにもなります。(どんなチャネルでも同様ですが。)
※2 特電法については平成23年度改訂版を最新として要点を確認しています。変更した点や解釈が間違っている等ありましたら、ご指摘ください。