昨今のマーケティング事情として、コミュニケーションデザインを考える上で時系列に顧客を捉える考え方がだいぶ認知されるようになってきました。
そういった最中、主宰している『コミュニケーションデザインの勉強会』においても『コンテンツマーケティング』について取り上げることが増えてきました。
今後も継続して実施する勉強会なので、一旦、これまでに勉強会で実施した内容について振り返り、参加者にとっては今後の勉強会の復習という形で、参加者ではない方にも日々の業務への参考にして頂ければと思います。
今回はコミュニケーションの段階と実施するコミュニケーションの役割について整理する、フレームワークをご紹介します。
コミュニケーションプロセスの整理
■ 顧客ステータス分類
対象がどのような状態なのかを把握し、次にどのようなステータスへ引き上げるべきなのかを整理した図が以下の内容です。まずは大分類として、どのように顧客分類をし、分類ごとに必要なコミュニケーションは何なのかを把握/整理しましょう。
(新規顧客化プロセス)
1. ターゲット
誰がターゲットなのか。定義が曖昧であればあるほど、施策効果の良し悪しの判断も曖昧なものとなってしまいます。
2. 認知者
自社およびブランドを認知してくれている人は、どのように自社やブランドを見ているのか。認知者を顧客化するために必要なコミュニケーションや不足しているコミュニケーションを把握する必要があります。
3. 能動的情報接触者
能動的に情報収集するために自社サイトなどを訪れた人は、どういったニーズやきっかけを基に訪れて来たのか。情報収集行動の傾向を追う事で、対象者がどのような問題解決を自社やブランドに望んているのかが垣間見ることができます。そのようにニーズが見えてきた対象者に対しては、より対象者個人にあった情報提供をする必要があります。
4. 見込み客
ニーズや検討段階がある程度進んだ段階において、決断を促すためのコンテンツやインターフェースが整っている必要があります。また、的を絞った対象者に対し余計な情報(他商品情報など)を提供することは、結果として対象者を迷わせる事へ繋がるので控えましょう。
5. 新規顧客
商品を購入する際の体験。使用中の体験。使用後の体験。これらの購入~購入後のステップごとに対象者に発生する疑問点や不便な点を解決し、より良い体験を提供することが更なるクロスセルやリピートにつながります。
(優良顧客化プロセス)
6.引き上げ顧客
例えば化粧品業界の場合は、初回おためしセットなどから本製品購入に至った対象者に対し、リピートを促すタイミングの良いコミュニケーションと、効果を実感するためのコンテンツが必要となります。その他の場合も、製品使用中の体験がより良いものになるためのコミュニケーションやコンテンツが必要になります。
7. リピート顧客
リピートした対象者に対し、より対象者を理解するためのコンテンツや、発生されると思われる疑問点および他ユーザーからの質問などを共有するコンテンツなど、継続するための関係性を構築するためのコミュニケーションが必要になります。
8. 定期顧客
定期的に購買していただくためには、できる限り対象者に手間がかからないようにする必要があります。定期的に製品を購入するために、製品が到着するタイミング、製品についてメンテナンスするタイミング、顧客の状況についてヒアリングするタイミングなど、更新する利便性と安心感を提供するための個に向けたTPOが必要になります。
9. 優良顧客
優良化した顧客が感じているロイヤルティがどこにあるのか。この点を見落とさないためにも、これまでに取ったコミュニケーションの履歴、直近の傾向、今後予測される行動を把握するなど、コンシェルジェのような対応が望まれます。
10. サポーター
自社を強く推奨し、ブランドの活動にも積極的に加わる対象者には、積極的にブランドがテーマとしていること、社会的責任や理念、そして直近に解決すべき問題点を提供することで、よりよい意見の提供と信頼を得る事ができます。
■ 意思決定プロセス(文脈)の考え方
対象者がどのような意思決定プロセスを通して製品の新規購入に至るのか。また、リピートへ繋がるのかを表したのが以下の図です。
これまでは漏斗モデル(パーチェスファネル)という考え方を基に『顧客になる対象者を絞りこむ』という発想を持たれるケースが多くありますが、以下の図では『脱落した対象者を引き上げるためのマインド醸成を実施する』という考えが含まれており、より大きな企業メリットを生む考えと言えます。
■ カスタマー・エクスペリエンス・マップという考え方
対象者のリテラシーやニーズを基準に、どのようなチャネルとどのようなコンテンツをていきょうすることが、対象者の状態に対してより良いものなのかを表した内容が以下の図です。
対象者は様々なチャネルと日々接触しており、それぞれの媒体において、得手不得手もあります。またその得手不得手の傾向も、世代ごとに身近なチャネルが異なるため、対象者の定義(この場合ペルソナ)を行い、どのような流れでブランドや自社の価値を理解できるリテラシーになるのかを時系列で段階毎に把握/整理することができます。
コミュニケーションの目的と役割
■ 顧客ステータス分類におけるコミュニケーションゴール
上述にもありますが、顧客ステータス分類を行い把握/整理することで、次のステップが明確になります。そして、コミュニケーション活動において大別される新規顧客獲得とリピート施策において、それぞれのコミュニケーションゴールへの道筋を示した内容が以下の図になります。
『どこから』から『どこへ引き上げるのか』が把握されることによって、顧客グループ(顧客分類)毎に取るべきコミュニケーションと難易度が把握/整理されます。
■ チャネルの役割
対象者のリテラシーやマインド醸成段階が整理されても、コミュニケーションのハブとなるチャネルの選択を間違えては伝わるものも伝わらず、受け取れるものも受け取れません。
そのため、実行しようとしているコミュニケーション目的に対し、どのような役割を各チャネルが担い、またその範囲や対象者はどのような接触姿勢なのかを表したのが以下の図です。
対象者が受け身なのか能動的なのかで、提供するべき情報量や質が異なるため、注意が必要です。
顧客が「見える化」してからがコミュニケーションではない
以前は手段にフォーカスしたマーケティングの話を見聞きすることが多かったのですが、最近はCRMやMAツールなどが充実してきたから、コミュニケーションを時系列(文脈)として捉えた考え方がマーケティングの現場にも浸透してきているように思います。
一方、効果指標は改善されているのか、というと、そうでもないようで、相変わらず顧客が「見える化」してからの数値しかみていなかったり、意思決定プロセスに基づいた重みづけがされていないケースの方が圧倒的多数なのが現状のようです。
消費にとってよいマーケティングを実行するためには、顧客理解を文脈に沿って行う必要性があり、その考えこそがLTVを向上させます。更にはブランド毀損になるような広告表現でKPIを達成しようとする行動も少なくなるのではないでしょうか?
今後も消費者と企業の間に立った視点を大事にしながら、参考にしていただける情報を発信できればと思います。